岡山城の月見櫓は、江戸時代初期に岡山藩主池田忠雄によって建てられた、本丸に現存する唯一の櫓で、国の重要文化財に指定されています。
特徴
- 外観: 城の外側から見ると二重二階建ての望楼型に見えますが、内部は一部地階を持つ三重の構造になっています。これは、櫓が建つ地盤が傾斜しているためです。
- 屋根: 最上層の屋根は入母屋造で、下層の屋根には千鳥破風や唐破風が用いられ、変化に富んだ意匠となっています。
- 壁: 白い漆喰塗籠造で、黒い下見板張りの天守閣とは対照的です。
- 軍事的な工夫: 城外側には、鉄板で覆われた出窓や石落とし、狭間(銃眼)などが設けられ、防御機能が強化されています。
- 意匠: 城内側の二階には、手すりと腰高障子が設けられた座敷風の空間があり、「月見櫓」の名前の通り、月を眺めるのに適した造りとなっています。柱には釘隠しの装飾が施され、天井板も張られています。
- 石垣: 櫓を支える石垣は、犬島産の白い花崗岩が用いられ、隅部は特に平らに整えられた方形の割石が算木積で積まれています。
歴史
- 元和から寛永年間(1615~1643年)にかけて、池田忠雄の治世に築かれました。
- 戦災を免れ、岡山城本丸に現存する唯一の建造物として貴重です。
- かつては、ここから岡山後楽園や岡山城天守、そして月を眺めることができたと伝えられています。
内部
- 一階と二階は、御殿建築に準じた意匠が見られ、畳が敷かれていた形跡や、釘隠しなどの装飾が残っています。
- 一階には、格子窓の付いた出窓や石落としがあります。床の一部は跳ね上げ式の構造で、下には隠し通路があったとも考えられています。
- 二階は、東と南に手すりの付いた縁側があり、開放的な空間です。
その他
- 岡山城の他の櫓は明治時代に取り壊されましたが、月見櫓は保存されました。
- 近年では、期間限定で内部が特別公開されることがあります。
月見櫓は、軍事的な防御機能と、風流な意匠を兼ね備えた、岡山城を代表する重要な文化財です。